人は、他人に認められたいという欲望に支配されやすい。その欲望が表現の質をゆがめ、危うい道へと誘導することがある。なぜなら、他人の評価に基づいて自分の価値を測るようになると、本質的な創造性や自己表現が犠牲にされるからだ。
たとえば、何か新しいアイデアを試みて、周囲の反応が良ければ、「これが正しいんだ」と思い込みやすい。だが、その「正しさ」は、時として真の創造性を切り捨ててしまう刃となる。自分の作品や表現が他者に受け入れられるかどうかを気にしすぎるあまり、重要な部分や個性を抑え込んでしまうことがあるのだ。それは、切ってはならない大切な枝を無意識に切り落としてしまう行為に似ている。
たとえば、小説を書く際、しばしば見かけるのは流行や典型的なテーマに安易に依存する作品だ。表面的には受け入れられやすく、読者の反応も良いかもしれない。だが、その裏には自己満足や他者の承認欲求に基づいた浅薄な動機が見え隠れする。創作が自分のためではなく、他人の目を意識して行われると、その本質的な価値は失われていく。何かを「流行に乗せる」ことが創作の基準になってしまうと、表現は薄っぺらく、浅いものになりやすい。
結局のところ、創作は自己表現であり、自分の中にある本当の声を表すものだ。他人の評価に左右されず、自分の道を貫くことが、本物の創造性を守る唯一の道となる。他者の目に映る自分の姿に囚われず、自分が信じるものを育てること。それができないなら、いつかはその「大切な枝」を切り落とし、何も残らない木になってしまうだろう。