第1章 出会いと始まり
舞台は春を迎え、新しい生活が始まる季節。
主人公の拓人は、大学4年生。就職活動を控え、少しでも有利に進めたいと、様々な対策に取り組んでいた。そんな中、拓人はある集まりに参加することになる。
「よー、拓人!久しぶりだな。最近どうよ?」
声をかけてきたのは、同じ大学の光太郎だった。彼はバンドサークルでギターを担当し、人気者だった。明るく気さくな性格で、誰とでも仲良くなれる。拓人も彼の人柄に惹かれ、親しくしていた。
「ああ、光太郎か。就活どうなの?大変じゃない?」
「まあね。でも、俺、バンドやめることにしてさ、その前にラストライブやるから、来て欲しいんだ。あと、意外なやつらも来るからさ、お前も絶対来いよ!」
光太郎はニヤリと笑うと、詳しいことは言わずに去って行った。
***
数日後、光太郎のラストライブの日。会場は小さなライブハウスで、ステージには光太郎のバンドが並ぶ。
「お待たせ!遅れてすみません!」
そこに現れたのは、2人の女性と1人の男性。1人の女性は小柄で華奢な体つき、もう1人は背が高く、はつらつとした印象。男性は落ち着いた雰囲気を纏っていた。
「お、来たな。みんな、紹介するよ。この小柄な子が瑞月。俺の元カノで、留学してたんだ。で、この2人がその留学仲間の理香と隆良。理香は隆良と付き合って同棲してる。隆良は就活生で、理香は社会人。就活の話、聞きたいだろ?」
隆良が苦笑しながら、光太郎の勢いに押され気味に自己紹介した。
瑞月は可憐な笑顔を浮かべ、理香は溌剌とした雰囲気で挨拶する。
「よろしく。俺は光太郎。こいつが拓人。で、俺らはバンド仲間。今日はラストライブなんだ。終わったら、うちで就活の話でもしようぜ。」
こうして、拓人と瑞月、理香、隆良は光太郎のバンドのラストライブを観ることになった。
第2章 虚勢と本音
ライブは盛り上がり、光太郎のバンドは最高の演奏を披露した。
「最高の仲間と最高のステージ!これで俺のバンド人生に悔いなし!これからは就活仲間だ!」
光太郎は笑顔で叫び、他のメンバーも同意する。
***
ライブ後、彼らは光太郎の家に集まった。
「理香ちゃんは、留学中、どんな感じだったの?楽しかった?」
瑞月が、理香に話を振った。
「うん、楽しかったよ。特に瑞月とは色々な国を旅したよね。思い出深いのは、スペインのサグラダ・ファミリア。2人で感動して泣いたよね。」
理香が笑顔で答える。瑞月も嬉しそうに頷く。
「隆良くんは、同棲生活どう?やっぱり大変?」
瑞月が、今度は隆良に話を振る。
「まあ、大変なこともあるけど、支え合ってるよ。2人でいると、1人じゃないから心強い。」
隆良は穏やかに答えた。
「光太郎は、バンドやめて、就活どうするの?やる気あるの?」
拓人が、光太郎に訊ねる。
「まあ、やる気はあるよ。でも、バンドやってたから、就活生みたいにスーツ着て、カタい面接とかはちょっと違うかなって。俺らしく自由にやってくよ。」
光太郎は、いつも通りの笑顔で答えた。
「私は、留学してたから、就活遅れ気味で大変。みんな、どんな対策してる?」
瑞月が、真剣な表情で尋ねる。
「SNSで自己アピールしてる。インスタとかで、ボランティアしてるところとか、サークル活動してるところとか、写真上げてる。」
理香が、少し恥ずかしそうに答えた。
「俺もインスタやってるよ。でも、なんか違和感あるんだよな。みんな、いいとこ見せようとして、本音隠してる気がして。」
光太郎が、少し悩ましげに言う。
「確かに。私も、インスタで留学生活を華やかに見せてたけど、実際は不安や孤独と戦ってた。みんな、本音隠して虚勢張ってるのかも。」
瑞月が、少し寂しげに呟いた。
第3章 光太郎の過去
「俺さ、こういうの嫌いなんだよ。」
光太郎は、唐突に真剣な表情で語り始めた。
「SNSとかで、みんな『最高の仲間!』とか書くじゃん。でもよ、そういうのって、本当に仲いいって意味じゃない時もあるんだ。」
光太郎は、少し悲しげな表情を浮かべる。
「俺、昔、仲間とバンド組んでたんだ。で、最初は楽しかった。でも、次第に仲間に不満が溜まってさ。俺はリーダーだったから、なんとかまとめようとした。でも、上手くいかなくて、最後は『最高のライブ!最高の仲間!』って言って解散したんだ。」
光太郎は、少し涙ぐみながら話す。
「その時、学んだんだ。ほんの少しの言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげなきゃいけないって。表面上の言葉だけじゃなくて、その裏にある本音を想像する。生きていくってことは、自分の線路を一緒に見てくれる人がいるかどうかなんだ。その人数は変わるけど、その時一緒にいる人の気持ちを想像することが大切なんだ。」
光太郎は、真剣な眼差しで語った。
第4章 深まる友情
拓人たちは、光太郎の言葉に感銘を受けた。
「光太郎、そんなことがあったなんて。でも、その経験が今の光太郎を作ってるんだね。」
瑞月が、優しく微笑みながら言う。
「光太郎の言う通りだと思う。就活でも、みんな自分を良く見せようとして、本音隠してる。でも、それって辛くない?自分を偽ってるみたいで。」
拓人が、真剣な表情で言う。
「そうだね。私も、留学中は不安だった。でも、瑞月がいてくれたから乗り越えられた。本音を言い合える関係って大切だよね。」
理香が、瑞月を見ながら微笑む。
「俺も、同棲してるから、本音隠すの大変。でも、隆良には全部話せる。それがいいんだ。」
隆良が、穏やかに微笑む。
「就活、大変だけど、みんなで支え合おう。光太郎の言う通り、本音で語り合える仲間になろうよ。」
拓人が提案する。
「うん!そうしよう!」
瑞月、理香、隆良が笑顔で同意する。
第5章 想像力の結末
拓人たちは、光太郎の言葉を胸に、就活に励んだ。
SNSの虚勢や面接での仮面。自分を良く見せようとしながら、同時に、お互いの本音を理解しようとする。
就活は辛く、苦しい道のりだった。しかし、彼らは光太郎の言葉を思い出し、自分自身と向き合い、お互いの気持ちを想像し合った。
***
季節は巡り、冬を迎えた。
拓人たちは、就職先が決まり、光太郎の家に集まっていた。
「みんな、おめでとう!就活、終わったね!」
光太郎が、笑顔で乾杯の音頭を取る。
「光太郎、ありがとう。就活中、何度も光太郎の言葉を思い出したよ。本音を想像することの大切さ、忘れない。」
拓人が、感謝の気持ちを伝える。
「私も。留学中の不安な気持ち、光太郎の言葉で救われた気がする。」
瑞月が、微笑みながら言う。
「俺も、同棲生活の大変さを乗り越えられた。ありがとう。」
隆良が、穏やかに微笑む。
「就活、終わってホッとした。これからは、社会人として頑張るよ。みんな、ありがとう。」
理香が、力強く宣言する。
「よーし、これからも、お互い支え合っていこう!就活終わったからって、終わりじゃないからな!」
光太郎が、笑顔でエールを送る。
拓人たちは、笑顔で同意した。
***
しかし、拓人には、まだ知らないことがあった。
光太郎は、実は、就活で苦戦していた。自由なスタイルで臨んだが、なかなか内定が出ず、苦悩していた。
「俺、就活、上手くいかないんだ。」
ある日、光太郎が、拓人に打ち明けた。
「え、でも、光太郎は、就活なんて余裕って言ってなかった?」
拓人は、驚きを隠せない。
「ああ、みんなの前では、強がってた。でも、実際は辛かった。自分のスタイル貫いても、評価されない。自分を偽ってるみたいで、空しかった。」
光太郎は、悲しげな表情を浮かべる。
「光太郎・・・。でも、お前が言った『本音を想像する』ってこと、俺は就活で生かせたよ。ありがとう。」
拓人は、真剣な眼差しで言う。
「そうか。嬉しいよ。でも、俺は、自分の気持ちを想像してくれる仲間が欲しかった。みんな、就活終わって、離れていく気がして。」
光太郎は、寂しげに呟いた。
拓人は、衝撃を受けた。光太郎の言葉の意味を、深く考え始める。
「光太郎・・・。俺たちは、お前の言葉で救われた。でも、お前は救われなかったのか?」
拓人は、悲しみを抑え、訊ねる。
「ああ、俺は、みんなの気持ちを想像できた。でも、自分の気持ちを想像してくれる人は、いなかった。俺は、寂しかったんだ。」
光太郎は、涙を流した。
拓人は、衝撃の結末に、言葉を失った。
エピローグ
拓人たちは、社会人として歩み始めた。
光太郎は、就活を再開し、自分のスタイルを貫き通した。その結果、小さな会社だが、自分のやりたいことを実現できる場所を見つけた。
「俺は、自分の気持ちを理解してくれる仲間を見つけた。これからは、お互いの気持ちを想像し合える仲間と、歩んでいく。」
光太郎は、笑顔で語った。
拓人たちは、光太郎の言葉を胸に、それぞれの道を歩みながら、お互いの気持ちを想像し合うのだった。