西の魔女の教え

第一章 学校に行けなくなった少女

春、新緑の季節。まいちゃんは、この春中学校に進学したばかりだった。あどけなさの残る顔立ちに、少し大人びた制服姿。まいは、新しい学校生活に胸を躍らせていた。

「まいちゃん、中学校楽しみにしているの?」ママが優しく尋ねた。「うん!楽しみだけど、ちょっと緊張もする……」まいは、小さな声で答えた。まいの不安は、新しい学校生活への戸惑いだけではなかった。

小学校時代から、まいちゃんは少し繊細な子だった。些細なことで落ち込み、傷つき、自分を責めてしまう。そんなまいちゃんを心配したママは、まいちゃんが新しい環境に慣れるまで、毎朝学校まで付き添っていた。

新しい学校には、すぐに仲良くなった友達もいた。まいちゃんは、友達と放課後に遊ぶ約束をしたり、一緒にお弁当を食べたりと、楽しい学校生活を送り始めたように見えた。

しかし、そんな日々は長くは続かなかった。ある日、まいちゃんは、仲良くしていた友達から、突然冷たくされたのだ。理由は、まいちゃんが友達の秘密をうっかり漏らしてしまったことだった。まいちゃんは、自分の軽率な行動を激しく責め、学校に行くことを拒むようになった。

「ママ、ごめんね。学校、行きたくない……」まいちゃんは、涙を浮かべてママに訴えた。「まいちゃん……」ママは、娘の気持ちに気づいてやれなかったことを責めた。「どうしてあげればいいんだろう……」

そんな時、ママの母親、つまりまいのおばあちゃんが訪ねてきた。「まいちゃんのこと、私に任せておきなさい」おばあちゃんは、不思議な自信に満ちた表情で言った。

第二章 魔女の手ほどき

「おばあちゃん、私、魔女になる修行をするの?」まいちゃんは、おばあちゃんから「魔女になるための精神力」を授かるという話を聞いて、目を輝かせていた。「そうよ。まいちゃんは、素晴らしい魔女になる素質があるの」おばあちゃんは、優しく微笑んだ。

「魔女になるための精神力」とは、自分で正しい方向性を決める力、そして決めたことをやり遂げる意志の力のことだった。おばあちゃんは、まいちゃんに、毎朝太陽に向かって両手を広げ、深い呼吸をしながら、自分の心に問いかける訓練をさせた。

「まい、今のあなたに必要なことは何?あなたの心は何を求めているの?」おばあちゃんは、まいちゃんに問いかけた。「今の私に……必要なこと。それは……」まいちゃんは、自分の心に耳を澄ませた。

「そう。自分の心の声に素直になるの。そして、決めたらやり遂げるのよ」おばあちゃんは、まいちゃんを優しく励ました。この訓練は、まいちゃんの心を強くし、自分で物事を判断する力を養った。

「悪魔というのは、人の心の隙間に忍び込むの」おばあちゃんは、魔女と悪魔の関係を教えてくれた。「疑い、恐れ、不安、そういった感情が悪魔を呼び寄せる。だから、強い意志を持って、悪魔が忍び込む隙を与えてはいけないの」

まいちゃんは、おばあちゃんの教えを胸に、悪魔がとりつく隙のない強い心を育むために、自分と向き合う時間を大切にした。

第三章 渡りの一日

季節は巡り、秋がやってきた。魔女修行を始めてから、半年が経とうとしていた。「まい、あなたは素晴らしい成長を遂げたわ」おばあちゃんは、まいちゃんの頭を優しく撫でながら言った。「もう、あなたの心は、自分で決めて、歩んでいける。私はそれを信じているわ」

「ありがとう、おばあちゃん」まいちゃんは、おばあちゃんの言葉に勇気づけられた。「でも、私はどうすればいいのかな。学校に戻るの?それとも……」まいちゃんは、自分の進むべき道に迷っていた。

「その答えは、あなたの心が決めること」おばあちゃんは、まいちゃんの目を見つめた。「あなたが楽に生きられる場所は、あなた自身が決めるの。私は、あなたがどんな決断をしても、応援しているわ」

その日から、まいちゃんは、自分の心に耳を澄ませる時間をさらに増やした。そして、「渡りの一日」と名付けたその日、まいちゃんは、自分の心が決めた進むべき道を、ママとおばあちゃんに宣言した。

「ママ、おばあちゃん。私は、ホームスクーリングをして、自分のペースで勉強をしながら、魔女の修行も続けていきたい。そう決めたの」まいちゃんは、はっきりとした口調で言った。

「まいちゃん……」ママは、驚きつつも、娘の決意を受け入れた。「あなたの決断を尊重するわ。おばあちゃんのところで、ゆっくりと学んでいきなさい」

「まい、あなたは立派な魔女になるわ。そして、あなたの決断は、あなたをより成長させてくれるでしょう」おばあちゃんは、優しく微笑みながら言った。

「はい!がんばります」まいちゃんは、魔女としての誇りを胸に、新たな一歩を踏み出したのだった。

エピローグ

「感性の豊かな私の自慢の孫」と、おばあちゃんは、まいちゃんを見つめながら呟いた。「おばあちゃん……」まいちゃんは、恥ずかしそうにしながらも、誇らしげな表情を浮かべていた。

魔女修行を通して、まいちゃんは、自分の心の声に耳を澄ませることを学んだ。そして、自分の進むべき道を、自分で決められるようになった。それは、おばあちゃんがまいちゃんに授けた、最高の贈り物だった。

「根性という言葉は、やみくもにがんばるっていう感じがするわ」まいちゃんは、おばあちゃんに言った。「おばあちゃんの言う精神力って、もっと違う感じがする」

「そう。根性とは違うの。精神力とは……」おばあちゃんは、魔女の教えを、まいちゃんに語り始めた。まいちゃんの魔女としての成長は、まだ始まったばかり。この先、まいちゃんがどんな魔女に成長していくのか、楽しみは尽きないのだった。